すべてがNになる(映画「ジャンゴ」)

☆×4
 

あらすじ
黒人奴隷が当たり前だった時代。奴隷のジャンゴ(ジェイミー・フォックス)は、賞金首ブリトル兄弟を狙うドイツ系賞金稼ぎのドクター・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)に救われる。
兄弟の賞金を得た2人の間には友情が芽生え、ジャンゴの妻ブルームヒルダを救うため、農場主キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)のもとへ向かう

 
まさにクエンティン・タランティーノ映画でした。
タラ公といえばFワード。Fワード映画といえばタラ公。
こう言っても過言ではないぐらいタラ公映画にはFワードが登場します。「パルプ・フィクション」では281回の「Fuck」が溢れ、今作は黒人奴隷映画*1ということで、「Fuck」以上に「Nigger」で彩られています。
キャンディ農場で働く奴隷スティーヴン(サミュエル・L・ジャクソン)のクソジジイっぷりと黒人奴隷を見下すファッキンニガーぶりは今作ベストアクトではないでしょうか。
 
登場人物の多さとサクサク死ぬキャスト整理整頓ぶりもタラ公らしく、2時間半の長尺も気にならない展開の早さ。ドクター・シュルツのあっけないアレは何だかなあとは思いましたけれども。
 
悪い白人といえば汚い歯、をディカプーが見事に演じており、今後はこういう路線でいけばアカデミーも取れるんじゃね?という素晴らしさでした。
しょうもない爆死白人でタラ公がカメオしてるとか、どうでもいいシーンでもクスっと笑えるのもさすが。大作風味に仕上げてるのとか、キャストが豪華すぎて安っぽい映画が似合うタラ公ぽくないなあとか、気になる点も小さく、やはり自分はタラ公のことが好きなのだと再認識しましたね。
 

今回のパンフ

タラ公の撮る映画は既存作のオマージュにあふれているのは周知の事実。今作ではマカロニウエスタンや時代劇以外にも数々の名作のいちシーンと同じカット、立ち居振る舞いや姿を撮影したりしています。
こんなのあったな、と思うシーンがあれば、ここまでかい!というのも。すべて書ききることはできませんが、映画評論家の町山智浩さんによる詳細な説明は読み応えがあり、本編を二度楽しむことができる重厚なパンフのできといえます。
 
ちなみに「ジャッキー・ブラウン」もNワードが多く、盟友だったスパイク・リーが鑑賞した際「Nワードを38回も使いやがって!」と切れて以降、関係が途切れたことも盛り込まれています。しかしリー作品に出演したこともあるサミュエルが「ニガーをバカにしたものじゃないだろ」と突っ込み、今作も「見る気はない」とコメントしたリーに対し、ジェイミーが「見もしないで批判するのは筋違いだろ」と切り捨てているとのこと。
今作では137個のNワードが「このシーンにはいらんだろ」というほど登場し、もし「ジャンゴ」を鑑賞したならばきっとリーもニガ笑いなことでしょう。*2

今回のデキ:おなかいっぱい

映画×短歌

良識派 キレる映画を撮り続け そんな彼らを見てニガ笑い

*1:ちょっと違うんだけど

*2:これが言いたかっただけ