誰も幸せにならない(映画「happyダーツ」)

ダーツで人生変えちゃう?



☆×2(ダーツプレーヤー的にひいき目にしてかろうじて)

注:ダーツプレーヤーのsu_kitchさんの感想なので、「誰?」が連続しますがスルーしてください。
ダーツを知ってる方ならちょっとだけ「へぇ〜」です。
どうせ誰も見ないからネタバレしてるよ!



ちなみに2008年公開のこの作品、実はある映画と同じ公開日。名前も似ているその作品とは「ハッピーフライト」!

ちなみに、この映画はウィキペディアにページすらなく、主要キャストもこの映画について触れている人はいない。そんなに黒歴史なのか…



ハッピーフライト
監督:矢口史靖(ウォーターボーイズスウィングガールズ)
主演:綾瀬はるか(ドラマのセカチュー、ICHI、ドラマのホタルノヒカリ)
出演:田辺誠一(数々のドラマ、映画に出演)、時任三郎(海猿で叫んでいたリゲイン)、寺島しのぶ(誰もが知る濡れ場女優)、吹石一恵(色々出てるおっぱい)

HAPPYダーツ
監督:松梨智子(初監督、初脚本。誰?と思ったらインディーズ映画の人だった)
主演:辺見えみり(映画初主演)
出演:加藤和樹(誰?と思ったらジュノンスーパーボーイで仮面ライダーだった)、新田恵利(元おニャン子)、森泉(ぐるナイでよく食べてた人。これが映画初出演)

圧倒的じゃないか矢口史靖!! HAPPYダーツは「初」の人が多すぎるぞ。




左:主要キャラなのに、この映画のことをなかったことにしてる加藤和樹)
 

(森泉の棒読みハンパねぇ!)







そんな「ハッピーフライト」公開日。「HAPPYダーツ」を観賞しパンフレットと映画特製グッズも買うバカ。それがわたしです。


「仕事:情熱なし 結婚:する気なし 夢中になること:なにもなし」の30代契約社員がダーツに出会うことで人生を変えちゃう。が基本。
08年といえば「スイーツ(笑)」という言葉が割と一般的になってきた時代で、典型的不良が甲子園を目指す「ROOKIES」のドラマがちょうど大ヒットしていたころ。その女性版をオーソドックスなサクセスストーリーとして描いた。でもプロットは悪くないのに、とっても微妙な仕上がりになった。

あらすじ

負け犬スイーツ30代不倫OLのえみりがダーツバーに行ってプロ選手のイケメン店員に惚れる

ド初心者えみりは女子日本一でイケメンのことが実は好きな森泉にボコられて一念発起

練習頑張る

ダーツバー店長のモロボシ・ダン(役だった人)に「道場破りしてこい!」と言われる

言いつけ通り「道場破りTシャツとハチマキ」を身に着けて道場破り

うまくなる。よーし大会で森泉にリベンジや!

そういえばイケメンに告白してない!

大会当日にイケメンがイギリスに旅立つことになり、えみりショック!

圧倒的なペースで勝ち抜き、決勝で森泉と対戦

あと1本で勝利!のとき唐突に回想。観賞者はここでえみりが大会前日、イケメンへ告白していたと初めて知る。
「まじすか、僕も好きだったんですけど」と両思いだったと判明。ニヤニヤ思い出し笑いし負け。

くやしい!でもダーツのプロ目指す! そのころイケメンはイギリスにいた。

恋愛成就してねぇ!!


ヘタクソが師匠との出会いで研鑽していく過程は「ベストキッド」のようにオーソドックスだ。意味の有無に関係なく主人公は着実に積み重ね、エキスパートとなっていく。

この作品でもモロボシ・ダンが師匠になるのだが、教える場面が実はない。仕事中に、通勤中に、家で、勝手に練習し気づいたら上達している。「道場破りしてこい」程度だ。

(ダーツは紳士のスポーツです。ハチマキや帽子、過度の露出のある胴着も本来は禁止です)

練習の過程で仕事の休憩中の屋上で、パンを食べながらバケツに小石を投げ入れる練習をするのだけど、重みの違う石で練習してもうまくなんねぇがら!!!*1
ただ、辺見えみりが映画を機にダーツにはまり、プロレベルになったというのは本当。本編中でも日本一の女性プレイヤー森泉よりえみりのほうが見た目はすげーうまく見える




余談ですが、バス待ちで素振りをするシーンがありまして。
ススキノで素振りするとタクシーが止まるので注意

(私も止めましたがダーツ仲間も何人か止めてます)



演出もポップ感を出そうとして滑りに滑っていた。
えみりがイケメンに一目惚れする様子を「イケメンが投げたダーツが的に刺さる=的はえみりのハート」という昭和的演出があり、ギャグなのか考えて苦笑いしてしまう。


面白かったのは、一線級のプレーヤーがカメオ出演しているとこ。ほとんどこれを見に行ったようなものだったりする。
「おっ、ここにも」という楽しみはあるが、不自然すぎる登場も多い。ダーツを知らない人にとっては通行人Aにしか過ぎない人がズームされてたり不自然な演技をしていたり「なんだこのヘタな撮影は」と思うこともあるだろう。

・オープニングでビリヤードしてるジョニーこと安食賢一と谷内太郎
・えみり必死練習の群衆に浅野慎弥と浅野ゆかり、桑野仁
・えみり道場破りの対戦相手が佐藤敬治ことK−PON
・イケメン加藤にハードでボコられた選手を慰めてるのがノリニティこと尾形行紀
・えみりがバス内でエアダーツしてる後ろの乗客が内田高志と江口祐司
・全国大会でえみりと2回戦で対戦する相手が滝沢あさひ
・全国大会で一瞬写る一般プレーヤーが浴本昇吾(ダーツ協力なので指導も行っていたと思われる)
・決勝で森泉を応援している保土田真理


セリフがあったのはT−arrowこと谷内太郎のみ。しかしそのセリフとは辺見えみりとビリヤードで遊んだあと「ありがとうございました」だけ。それでも棒読みってどんだけ!
一番オイシイ役は役名まであった滝沢あさひだろうか。


スポーツをテーマにした映画は数々あって、残念ながらほとんどが失敗している。加勢大周が注目を浴びた「稲村ジェーン」だって実はれっきとしたサーフィン映画だ。
成功した映画は矢口作品の「ウォーターボーイズ」といった熱血スポ根ものが多い。大爆死するのは、この作品と同じ年公開でいえばラクロスを知らないアホが撮った「少林少女」、バスケを知らない人が撮った「フライング☆ラビッツ」といった変にヒネった作品ばかり

その点、「HAPPYダーツ」はダーツについては描けていたし、ダメOLの辺見えみりが一流プレーヤーに育っていく根性モノだったのも確か。試合だって今年のMJトーナメントで撮影しただけに臨場感があった。

知名度もなく成功の可能性が低かったので致し方ないけれど、それでも脚本が致命的に残念だった。

映画×短歌

恋愛とダーツに割と共通点 穴に入れるのが難しいとか

*1:「戦時中に小石バケツで練習したプロがいた」という「沢村栄治は160キロ投げた」レベルのダーツ界都市伝説