原理主義なんてぶっ飛ばせ!

「高嶺の花」を「高根の花」と書いて日本語を乱す新聞業界 - YAMDAS現更新履歴

「高嶺の花」の「高根の花」への書き換えは、新聞業界の取り決めを踏まえて行われているようだ。

それは理解した。しかし、それでも書かせてもらうが、その方針は糞である。

その通り! 勝手に変えんなヴォケ!

と、根本的にはid:yomoyomoさんと同じ考えでdisるつもりはない。
プロに殴りかかるようで恐縮だが、「高嶺の花」の件についてのTLが面白かったのでネタにしてみる。


この「嶺」事件。このおおもとは新聞業界というより、新聞で使う用字用語を所管する新聞協会の取り決めだ。
小ネタから始めると、常用漢字とは日常使用する漢字のことで数は2000弱。日本語は時代の流れとともに変化するものであるし、一定の時期を経て追加されている。
今度追加される常用漢字には「俺」「岡」「淫」などがある。新聞上では「俺は崖から飛び降りた」は「おれはがけから飛び降りた」となる。大差ないじゃないか、と言われたらそれまでだが、*1よく使われるし読めるし書けるから追加しようぜ!という高尚な判断のもとの追加なので、文句はない。
「おれはがけから」がひらがなだらけで読みにくいのを修正できてよいとは個人的に思うのだけど。


はい脱線。

このTLを読んで調べてみた。「高根」が初出というのは事実でありケチをつけるつもりはない。ただ数冊の辞典を調べてもこの1例きり以外なく、高根と高嶺を比べてどっちが*2違和感がないか?と聞いたならば、高嶺を選ぶ人が多そうなのはTLを読む限り大勢だろう。

一方、新聞協会の用字用語取り決めをまとめた聖典共同通信ハンドブック」によると「嶺」は表外字のため「×高嶺の花 ○高根の花」となっている。

すなわち、新聞協会として「正しい日本語の『高根』にしたんでっせ〜」との考えなぞないのだ。

高値と高嶺のどっちが正しいか、ではなく「高値」を使う理由はこれだけ。新聞協会の聖典・共同通信ハンドブックより。
(証拠。id:yomoyomoさんに送信したtwitpicより。共同通信ハンドブックの「高嶺の花」欄。高値って書いてる恥ずかしい間違いは見なかったことに・x・)

そんな表外字。これにも例外がある。
沖縄の稲嶺進名護市長。この嶺はそのままなのだ。なぜなら「人名だから」。
そして連日のラブプラスネタで恐縮だが、ラブプラスには同級生の高嶺愛花(たかね・まなか)というキャラがいる。愛花は*3二次元でありヒトではないが、「固有名詞なので」。

もし同姓同名の高嶺愛花さんがリアルにいて、W杯のチケットについてコメントすると…

高嶺愛花さんは高騰するチケットについて「見に行きたかったのに残念。高根の花ですね」と嘆いた。

疑問が湧くだろうが仕方ない。この間抜けでしかない用字用語原理主義について、共同通信ハンドブック的な返答をするとこうなる。

Q:なんで赤信号で止まるの?
A:赤信号だから


原理主義は用字用語だけではない。

人名にある「龍」「竜」、「嶋」「島」、「澤」「沢」。過去には*4こんなこともあった。
○作家の芥川龍之介
×東京都の会社員、芥川龍之介さん  ※龍→竜

長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督
×東京都の会社員、長嶋茂雄さん  ※嶋→島


これは新字原理主義。「旧字は新字にしなければならない」が、有名人は考慮される。本人が「『澤』使いたいんだよねー」と言ったらそれまで。
ただ、これは各社でもともとの見解が分かれていることもあり、のちにあまりこだわらなくなったというオチがあると追記しておく。



原理主義はもちろん人名だけにとどまるわけがない。

○ボールが弾んだ 話が弾んだ(はず〜む)
×ボールを弾いた 笑い声が弾けた(はじ〜く)

昨夜の日本代表GK川島がボールを弾くのはダメだが、日本代表の勝利で話が弾むのは良いのだ。
何が違うの?との問いへの答えはこれだ

ハンドブックに書いてあるから



だがこのハンドブック原理主義、悪い点ばかりではないと少々擁護しておこう。用語だけに。

  • イジメを止める
  • イジメを止める

さてこの2つ、何が違うか。上は「イジメをやめる」、下は「イジメをとめる」なのだ。

分かるわけないだろ!は当然。

「とめる」「やめる」は同じ変換がされてしまうわけだし。
もし、「A君はイジメを止めた」という文章があったとする。「とめた」なら英雄だが、「やめた」ならいじめっ子である。前者のつもりが後者と見なされては名誉棄損もはなはだしい。
なので「やめる」はひらがな、「止める」は漢字と書き分けを行っている。

だから何?と聞かれたら心苦しいが、こういう答えになる。

ハンドブックに書いてあるから


この新聞協会による数々の原理主義は「たいがいにせぇよ」というのであふれている。今回の高嶺にしろ、現在では定着したが*5「スポーツ選手が『鳥肌が立つ』というのはおかしい」発言改悪といった馬鹿な話がたくさん。

だが、文脈を変えかねない紛らわしさを防ぐ点では、用字用語じたいは否定すべきではないのも事実。


もちろん原理主義はdisるべきだし、マスゴミと言われても仕方ない間抜けなニュースもdisるべきだ。だが、日本語は時代とともに変化していくわけで、最低限日本語の用法をキープしているごくごく一部の点については*6むやみにdisるものではないと思う。





・正しいが正解だとは限らない 日本語だとかエコバッグとか

*1:本当は違うけど超訳するとこうなる

*2:正しいか?ではない

*3:ラブプラスは現実!という方には申し訳ないが。まあリンコは現実なんだけど

*4:いまは原理主義から脱した

*5:「リベンジ」なんてのも

*6:もちろん、基本的には自分もdisるほうなんだけど