ブ ラ ピ 無 双(映画「ワールド・ウォーZ」)

☆×5
 
全人類に告ぐ、来たるZデーに備えよ
 

イスラエルでの「壁を登るゾンビ」は3Dらしい迫力でした。IMAXで見たかったかな)

 

あらすじ
元国連調査員の良きパパで愛妻家のブラピは妻と娘2人と渋滞にはまっていた。
全く動かない車列。背後から暴走トラックが現れ異変に気づく。全世界で謎のウイルスが爆発的に拡大し、感染者から家族を守りつつ逃げるブラピ。
そのとき国連事務次長のティエリーから連絡「ウイルス対策のため、力を貸してほしい」。
妻子を守るため、ブラピは「Z(ゾンビ)」のメール発信元、韓国米軍基地へ向かった。

 

いろいろ雑だけど面白すぎる!!!
 
この夏、「パシフィック・リム」「マン・オブ・スティール」と並ぶ全世界注目作。
プロデューサー・ブラッド・ピット率いる「プランB」の作品は傑作揃いで、「トロイ」のような大作、「キック・アス」みたいな秀作も。平均点を下げているのは「食べて、祈って、恋をして」ぐらいでしょうか。
 
パニックスリラーものとしてはダニー・ボイル作「28日後…」ぽく、近年流行の「走るゾンビ」草分けことザック・スナイダー作「ドーン・オブ・ザ・デッド」に近いテイストも。
今作はブラピが「僕の子供が18歳になる前に見ることのできる」と述べた、レーティングを上げない演出が特長マーク・フォースター監督はゾンビ映画と単に分類されることに抵抗があるそうで、血や切株描写なしでもスリルのある仕上がりになっています。
数あるホラー、バイオレンス作品の壁といえばレーティング。「キック・アス」もクロエ・グレース=モレッツちゃんの台詞にFワードやSワードがあるだけでレーティングが上げられた例もあり*1、観客動員に直結するわけです。
ただ、北野武監督「アウトレイジ・ビヨンド」では前作から一転、血を極力映さない演出に。監督が「血が映らない方が痛みが伝わることもあるんだよね」と言うとおり、前作の歯医者ドリルゴリゴリよりも痛々しいシーンだらけでした。
「Z」も同じで切株描写を極力避け、一方で画面外の断末魔がスクリーンに伝わる、飛び出るように仕上げてたと思います。「アウトレイジ」も続編の方が怖かったし。
 
とはいえ、家族愛前面の予告と違い、物語が進むほど洞察力と観察力のフォースを持ったブラピ無双となり、何のための旅だったのか、とか、あの少年と女兵士は何だったのか、とか、あの研究者はバカか、とか微笑ましいツッコミどころに溢れてもいました
 
冒頭のまだ混乱してるさなか、Zに噛まれた人が感染者になるまできっちりカウントを取ったり、イスラエルで子供を避けるZから偽装ワクチンのアイデアを得たりと常人ならざる洞察力は「アウトロー」のトム・クルーズのようで興奮しましたね。
ラストのコーラごくごくブラピとゾンビはMUSEのMVにしてもよいほどカッコ良いシーン。食べたり飲んだりするブラピは「オーシャンズ」シリーズでも見たけど、やっぱり絵になります。
 

今回のパンフ

パンフでは、そのジャンルの専門家が時折登場します。音楽映画ならミュージシャン、古典小説の実写なら翻訳者といったように。
ウイルスが猛威を振るう11年のパニックスリラー映画「コンテイジョン」でも専門家が寄稿していましたが、群集心理専攻の人、科学ジャーナリストともに非常につまらない論文でした。
今作の寄稿は東大医学研究所の一戸猛志准教授。ウイルス学の定義や歴史から、劇中に登場するスペイン風邪の猛威、偽装ワクチンの理論まで、端的に短くまとめられており、講義を受けてみたい!という面白さ。
ただ「この映画を見た若い人たちが興味を持ち、研究の道に進む人が増えることを期待してます」との締めは、ボンクラが血沸き肉踊ってるだけなので厳しいとおもいます!

撮影については、近年流行のザクザク編集をできるだけ使わず、長回しやヘリからの空撮など古典的というか奇をてらわないカメラワークは監督のこだわりのようで、かるーくザクザク編集をdisったコメントでした。作品によってはザクザク編集って合わないですからね!

プロダクションノートのページは映画のテイストを生かしたのか赤背景に黒文字という禍々しい作りですが、目がチカチカした!

今回のデキ:工夫たくさん

映画×短歌

ショッピングモール向かわず屋上へ フラグにならぬブラピ無双か

*1:ただし監督のマシュー・ヴォーンは、ヒットガールの口の悪さを変えると作品の根幹に関わるためレーティングを受け入れた