バカ処刑人(映画「ゴッド・ブレス・アメリカ」)

☆×4


あらすじ
世の中まじクソ。隣人のバカ夫婦はうるさいし元嫁はアホみたいな男と付き合ってるし、テレビでも見るか…あーバカばっかり何なんだよクソつまんねーな、えっ!セクハラ? 善意で家調べて花束送ったり手紙書いたりするのがセクハラなの? えっ、クビ?
あーおわた、ちょ、脳腫瘍??? 死のうかなー、いや、テレビに映ってたあのバカ女ぶっ殺してからにするか…

昨年、コスプレ男がスパナで正義の名の下に連続殴打する「スーパー!!」という映画がありまして(小悪党は見た!コスプレ男連続殴殺未遂事件)、どちらの主人公もフランク。
コスプレフランクはテレビの中のヒーローに天啓を受けたキチガイなのですが、今作フランクはテレビの中にすら憎悪をかきたてる「どこにでもいそうな鬱屈を募らせた人」。
米国でも「アメリカン・アイドル」、パリス・ヒルトンリンジー・ローハンらバカセレブ、度の過ぎたドキュメンタリー、人種差別が極端、といったゲスな番組が多く、フランクのように暴走する人がいてもおかしくはない。

なーんて。んなわけないない。

「常人がキチガイと化す」わけでもないのです。コスプレフランクと同じで。
フランクはセクハラに勘違いされて会社をクビになるわけですが、「頭の薄くなったオッサンに社員名簿で住所調べられて自宅に花を贈られる」のはセクハラ以前に気持ち悪いので、そういう素養のあるオッサンであると冒頭でサクっと説明されております。
ストーカーって相手が好きすぎて憎悪をかきたてる存在でもあるし。テレビが好きすぎて憎悪の対象となる、みたいな。小さいですね。

確かに、クソみたいな上司や同僚や必然と目にするアホどもに疲れて家に帰ってテレビをつけたら、あいうぉんちゅー!とか品川とか見たらイラっとしますよ。だから帰宅したら自分はテレビはつけない。つけた瞬間にイラっとするものを目にしなくて済むようビデオ出力画面にしてもいる。
「F○○Kな現実にブチギレ」と本作では伏せ字をしてあるけど、世の中FUCKですファックです。クソはクソといっていい、ブサイクがアイドルづらするなといっていい、ヒョロくて歌も踊りも駄目なくせにアイドルやんなといっていい、品川はつまんないといっていい。
ただ、ブチ殺しに行くまではしないのが常人です。

ところがフランクはクビ、病気、元妻の再婚、娘に疎んじられる、と人生チェックメイト。忍耐が表面張力ギリギリに至ったところで、決壊のきっかけがゴシップガールみたいなテレビだった、というのが皮肉でよいです。狂人ぽくて。
そんなセレブ小娘をブチ殺した現場で出会った女子校生ロキシーと世の中のバカをぶち殺しにいくわけで、劇中でもロキシーが「『ボニー&クライド』みたい!」といったようにイメージしただろう点はあれども、JKとオッサンだけに、ロリコン歓喜な展開になるわけもなく、ピュアな殺人ロードムービーになってしまうのはファンタジー感があってなおよいです。狂人ぽくて。
フランクは最後にアメリカンアイドルの収録中に乱入してAK47を乱射するわけですが、日本だとAKB48の番組にAK47をぶら下げて乱入するっていうシュールなキチガイ映画が撮れないかな?無理か。

フランクがクビになる直前、同僚との会話でアメリカンアイドルやゴシップガールといった番組の低俗さを訴えてましたが、「テレビがいかに低俗か」を強調すればするほど「なんだかんだ見てるじゃん」というツッコミをしたくも。
AKなんたらとかジャニなんたらとかなんたらトークとか、興味ないので「好きなら好きでいいんじゃない?」レベルのぼくですが、ネットとかついったーとかで「いかにテレビがゲスで低俗でつまらないか」とマイナス面を訴えるのが好きな人の多さを見るに、「政治家は民衆の程度を映す鏡」の政治家をテレビに置き換えても変わらないよなあ、と思います。


あ、でもフランクとロキシーが若年出産をテーマにした「JUNO」をdisってたけど、「トワイライト」「アメリカンアイドル」「ゴシップガール」と同列に扱うのはどうかと思ったよ!*1

あ、どうでもいいけどJKロキシーとメンヘラビッチリビー、キチガイフランクのパートナー対決はリビーに軍配が上がりました。ロキシー役のタラ・ライン・バーってかわいいっちゃかわいいんだけど、なんとなく地味かなあと。
同じ地味めでもエレン・ペイジのほうが好みです。寸胴だし。



映画×短歌

嫌い嫌いも好きのうち認めたくないものだな興味の証を

*1:ご存じ「スーパー!!」のヒロインは「JUNO」でブレイクしたエレン・ペイジ