もういい!猿がんばれ!(映画「猿の惑星 創世記」)
☆×4
あらすじ
科学者のウィル(ジェームズ・ブランコ)はアルツハイマーの父の病気を治すため新薬を開発、メス猿に投与したところ成功したもののその猿は死亡し、実験は失敗した。
が、子猿を守るために暴れただけで、実験は実は成功していた。ウィルは猿に「シーザー」と名付け育てる。
驚異的な知能となったシーザーは、ウィルの父を守ろうとして人間を襲ってしまい霊長類施設送りに。そこで横暴な飼育係マルフォイの虐待を受け、人間不信の芽を育てていく…
人間なんていらんかったんや!
と思いますね。そもそもが黒人差別や人権運動を猿と人間に置き換えたSF古典シリーズ、もはや語ることはないわけで。今作では黒んぼが米大統領になってしまうようになった現代に則したのかそういった色は薄く、疑似親子の関係性と人間らしいすれ違いによる不信が生むドラマに焦点が当てられているようにも。
人間側の主要人物に正義感もなく、「第九地区」の「もういい、エビがんばれ!」のように肩入れしてしまいました。
とはいえ役者バカ、ジェームズ・ブランコらしいドラマでしたね。
「シーザー」の名前でこれまでのシリーズを思い出すとはいえ、繋がっているようで繋がっていない。シーザーとウィルの疑似親子、ウィルとチャールズの親子の絆がメインになっていて、「アルツハイマー特効薬」が人類を救う革新的発明から、最後には人類を滅ぼすキーアイテムとなるストーリーの妙はさすが。
印象深かったキャラは、まずやっぱりマルフォイ! トム・フェルトンという名前ではピンと来ないほどマルフォイ!
彼演じるシーザーが送り込まれる霊長類保護施設の横暴な飼育係なんですが、ここは捕虜虐待といった近代の課題をうまく置き換えた演出。ほんとにマルフォイが悪く見えて仕方ないので、今後は性格俳優として悪役道をひた走ってほしいものです。
そしてシーザーたち猿の造形。驚異的な知能を持つシーザーの表情は人間そのもので、特殊メイクだったシリーズと違う表現には驚くばかり。
あと、これまでのシリーズでの位置づけが変わっているのも興味深い。シリーズでは凶暴キャラだったゴリラが実は慎み深かったり、チンパンジーが案外暴れ者だったり、近年の研究成果を反映したキャラの描き方は、続編でどうなるかなと。
軍人=ゴリラ、政治家=チンパンジー が今後は逆になるのかも?
小ネタ
観賞後、エスカレーターで並んでいると前にいた学生風カップル(推定20歳前後)の会話が面白くて。
彼女「面白かったねー」
彼氏「これ絶対続編作る気満々だな」
彼女「そうなの?」
彼氏「ハリウッド映画ってのはさ、続編ありきなんだよ! パイレーツ・オブ・カリビアンだって3部作だったし!」
彼女「へぇ」
彼氏「この映画、ヒットしたら続編作るね! 猿と人間が戦う話になるね! そんな終わり方だったじゃん!」
彼女「そうなりそうだね!」
続編を作るとしたら、「ウィルの実験前に宇宙に飛び立ったスペースシャトルがとある惑星に降り立ったら、そこは猿が支配する惑星だった」というストーリーはいかがですかね?
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猿の惑星って古典SF映画じゃないの…?
映画×短歌
あ〜ちゃんはゴリラじゃないと繰り返し 気づけば聴いてる「チョコレイト・ディスコ」